朽ちかけた小屋から見つかった、宮大工の技が光る「輿」
朽ちかけた小屋の整理を手伝っていたときのことです。雨風で一部は腐りかけていましたが、埃を払うと現れたのは、まるで神社の御神輿のような、精巧な作りの「輿(こし)」でした。40年以上も前のものとは思えないほど美しく、釘を一本も使っていないのではと思わせる木組みの技術は、まるで宮大工が手がけたかのようでした。この発見は、単なる古い道具ではなく、職人の魂が宿った芸術品を見つけたような、感動的な瞬間でした。

土葬文化が生んだ、地域と技のつながり
この輿は、土葬が主流だった時代に、故人を墓地まで運ぶために使われていたと聞きました。当時の葬儀は地区全体の一大行事で、別の地区の人たちが穴掘りをするなど、地域全体で故人を送る助け合いが当たり前だったそうです。
しかし、今は状況が大きく変わりました。家族葬が主流となり、火葬が一般的になったことで、輿の役目は終わりました。そして何より、そうした助け合いの習慣そのものが薄れてしまったように感じます。この輿は、職人の技だけでなく、そうした過去の温かいコミュニティの姿を今に伝える貴重な遺物です。

なお、今回の発見については、両丹日日新聞にも掲載されました。 雲原の寺谷区で「土葬」時の輿見つかる 今後使用されないため、龍雲寺でお焚き上げへ
感謝とともに、次世代へつなぐ物語
使い道がなくなったこの輿をどうするか、という問題が持ち上がりました。ただの廃棄物として処分するのではなく、かつての役割に敬意を払い、供養してお焚き上げすることが決まりました。
この輿は、単に亡くなった人を運ぶ道具ではありませんでした。それは、故人への最後の敬意、そして残された人々が心をひとつにするための大切なシンボルだったのだと思います。この輿が供養されることで、その物語が次の世代へと語り継がれることを願います。









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